本人以外の人が債務整理を行うことは可能なのか?

本人以外の人が債務整理を行うことは可能なのか?

借金の返済に悩んでいる時に債務整理は有効な手段です。 しかし、「そこまで切羽詰まってない」「何だか手続きが難しそうでよく分からない」「もし保証人に迷惑がかかってしまったら」などと、本人が債務整理に積極的でないケースが意外に多いです。 そのような時は家族などが本人の代わりに債務整理の手続きを行いたくなりますが、本人以外の人が債務整理をすることはできるのでしょうか。 今回は本人以外の人が債務整理をすることができるのか、また保証人への影響について詳しく見ていきたいと思います。

債務整理とはどんな手続きか?

債務整理とは、借金の減額や支払いの延長によって借金問題を解決する手続きです。 一般的に債務整理には任意整理、個人再生、自己破産、特定調停の4つの手続きがあります。 任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と直接交渉を行い、月々の返済額や将来の利息を見直します。 個人再生とは、裁判所を通して借金を1/5~1/3程度に減額してもらい、原則3年で全額返済を目指す方法です。 自己破産とは、裁判所に申し立てをすることで、全ての借金の返済を免除してもらうことができる方法です。 特定調停は裁判所の調停委員が債権者との交渉をサポートしてくれる方法です。 また過払い金が発生している場合は過払い金請求をすることもできます。 過払い金請求も債務整理の1つになることがあります。

債務整理と本人確認

本人以外は原則できない

債務整理は原則として本人以外の人が行うことができません。 なぜなら、債務に関する情報は個人情報となるからです。 そのため、本人でなければ債務整理に必要な書類を取り寄せ、手続きを進めることができません。 本人以外には個人情報は開示されません。 家族や恋人の借金問題であっても、結局は債務者本人が動かなければなりません。 また債務整理はお金が絡む問題なので、勝手に処分されたりするとトラブルになってしまうので、本人以外が行うことはできません。

ただし、例外はあります。 本人の意思判断能力の欠如が確認された場合や病気などで自分では手続きを行うことができない場合は、裁判所が選んだ後見人による手続きが認められることがあります。

債務整理は基本的に専門家に代理人なってもらう

基本的に債務整理を行う時は、弁護士や司法書士といった専門家に依頼します。 債権者と交渉するために、専門家が債務者の代理人となります。 その際、予め専門家に委任状を渡し委任契約を結ぶ必要があります。 委任状が専門家へ渡されると、専門家は債権者に対し受任通知を送付します。 そこから債権者との交渉が始まります。 委任状はその債務整理に関する代理権を委任するためのものです。 そのため委任者の名前と印鑑、代理人の名前、債権者または裁判所の名前、委任する内容の4点を盛り込むことが一般的です。 専門家に委任する時は、本人が直接委任状を渡さなければなりません。 面談の義務があるからです。 本人以外の人が専門家に依頼することは認められていません。

委任状があれば任意整理ならば本人以外の家族でもできる

債務整理は専門家に代理権を委任するのが基本ですが、任意整理の場合は本人以外の家族や友人、恋人でも委任状があれば行うことができます。 その際、代理人は報酬をもらってはいけないことが条件となります。 ただし、手続きを行うことができてもメリットはほとんどありません。 そもそも専門家でなければ交渉に応じてくれない債権者は多く、専門家でなければ減額することができません。

弁護士と司法書士のどちらに債務整理を依頼する?

弁護士と司法書士の違い

債務整理は弁護士や司法書士の専門家に依頼することが一般的です しかし、弁護士と司法書士では扱える債務整理の案件に差があるので注意が必要です。 依頼するのが弁護士の場合、債務整理のすべての案件を扱ってもらえます。 一方、司法書士は借金や過払い金が140万円を超える案件の場合、手続をすることができません。 途中まで手続きを進めていたとしても、140万円を超えた時点で手続きを進めてもらえなくなってしまいます。 また、司法書士は地方裁判所以上で裁判の代理人になることができません。 そのため、地方裁判所での手続きが必要な個人再生や自己破産の場合、司法書士は代理人になることができません。

任意整理は司法書士も検討する

任意整理を行う場合、借金と過払い金の金額が140万円以下であれば司法書士に代理人として手続をしてもらうことが出来ます。 もちろん条件さえクリアしていれば、行ってもらえる手続内容は弁護士に頼んだ場合と変わりません。 司法書士へ依頼した際にかかる費用は、弁護士に依頼するよりも低価格で抑えられる場合が多く、債務整理にかかる費用を節約したい方には大きなメリットとなります。 しかし、先ほど記載したように、手続の最中で借入金や過払い金の額が140万円を超えてしまった場合には、司法書士には手続きを進めてもらえなくなってしまいます。 司法書士に任意整理を依頼する際には、借金と過払い金が140万円をオーバーしてしまう可能性がないか十分注意して依頼を行うようにしましょう。

個人再生と自己破産は弁護士に依頼する

先に説明したように個人再生と自己破産の場合、司法書士は代理人になれず書類作成や申し立てなどのサポート作業しかすることができません。 そのため、裁判所へ出向く必要がある場合には依頼者自身が自分で手続きする必要が出てきてしまいます。 そもそも個人再生や自己破産は借金の額が高額になってしまう可能性が高くなっています。 ですので、司法書士では対応してもらえない場合が多いです。 弁護士に依頼をすれば、すべての手続きを代行してもらえますし、案件の金額も気にする必要がありません。 そのため。個人再生や自己破産の場合は弁護士に依頼することがオススメです。

債務者本人が死亡してしまった時

相続人に債務が継承する

借金を残したまま債務者本人が病気や事故などで死亡してしまうことがあります。 このような場合は、法定相続人が借金を継承することになります。 法定相続人とは、「法的に被相続人(亡くなった人)の財産などを相続する権利がある人」のこといいます。 相続では家や財産といったプラスの遺産だけでなくマイナスの遺産も継承されます。 たとえば、夫が死亡した場合で妻や子供がいたら、妻と子供がその借金を相続することになってしまいます。 プラスの遺産は相続して、マイナスの遺産である借金は相続しないということはできません。 借金があることを知っている人はまだいいのですが、家族に借金を隠しているケースは問題です。 最近はキャッシングやカードローンが広まり、利用者が増えています。 家族も知らないうちに借金を抱えていたなどということも珍しくありません。 遺産相続の段階になって困らないように、亡くなった人に借金がなかったかを調べることが肝心です。 もしも、借金が見つかった場合は金額や債権者についてもきちんと把握しておくことが大切です。

相続放棄を検討する

被相続人にめぼしい財産がなく、発覚した借金を法定相続人が払えない場合は相続放棄を検討しましょう。相続放棄とは、「法定相続人は被相続人の権利や義務を一切受け継がない」ことです。プラスの遺産もマイナスの遺産もひっくるめて、すべての相続財産を放棄するもので、これは残された家族の生活を守る方法です。ただし、相続放棄をしてしまうと、プラスの遺産も手放すことになるので注意が必要です。 もしも、プラスの遺産がある場合は、相続放棄したほうが良いのかどうかを法律の専門家に相談してしっかり検討することが大切です。 相続放棄の手続きを行う場合、「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出します。 家庭裁判所が認めれば「相続放棄申述受理通知書」が交付され、手続きは完了です。ただし、この手続きは被相続人が亡くなった直後から3ヶ月以内に行わなければなりません。 3ヶ月内に申述書を提出しない場合は、相続を単純承認したものとみなされますので、十分注意してください。

保証人と連帯保証人の違いは名前だけじゃない

債務整理において保証人と連帯保証人は、借金を返済できなくなった債務者に代わって返済義務を負いますが、大きく三つの違いがあります。 一つ目は「催告の抗弁」です。 債権者の請求において、保証人は「債務者に請求してください」と主張できますが、連帯保証人はそれを主張できません。 二つ目は「検索の抗弁」です。 返済能力がある債務者が返済を拒否した場合に、保証人はその理由をもって債権者に強制執行するよう主張できますが、連帯保証人はそれができません。 三つ目は返済額です。 保証人が複数いる場合、借金は頭数分で割った金額のみの返済で済みますが、連帯保証人は複数人いたとしても総額を支払う必要があります。 金銭消費貸借契約に記載されている保証人とは、一般的に連帯保証人を指しているため覚えておきましょう。

債務整理をした時の連帯保証人へどう影響するか

任意整理をした場合の影響

債務者が連帯保証人付きの借金を任意整理した場合、少なからず連帯保証人にも支払い督促の連絡がいく事になります。 ただし、任意整理では債務整理の対象とする債権者を選択出来るので、連帯保証人付きの債務を任意整理の対象から除外する事で、連帯保証人に一切迷惑をかけない事は可能です。 連帯保証人が付いている債務以外を整理することで、連帯保証人付き債務の支払いへの余裕も多少なりとも生まれるはずです。 そのため返済をすることができる可能性があります。

個人再生・自己破産した場合の影響

個人再生や自己破産の場合は連帯保証人への影響が避けられないものになります。 個人再生・自己破産の許可が裁判所から下りると債務者の借金は大幅に減額、もしくは免除となります。 ただし、免責となるのは破産申請を行った債務者本人のみであるため、債権者は本来債務者が支払うはずだった金額を連帯保証人に請求する事になります。 連帯保証人は支払いの義務を全うしなければならず、残債の支払い能力が無い場合は最悪連帯保証人も債務整理を行わなければならない事態になりかねません。 個人再生や自己破産は任意整理に比べて連帯保証人の負担が大きいため、可能な限り早期の段階で相談するか弁護士などの専門家を交えて詳しい説明を行う事が大切です。

家族への影響はない

債務整理を検討する時に自身の家族への影響を心配し、中々手続きに踏み切れないと言った人も多いです。 しかし、任意整理であろうと自己破産であろうと、連帯保証人になっていない限りは家族へ請求がいく事はありません。 借金はあくまでも個人信用に基づくものであり、債務者と法律的に支払いの義務が付与されている連帯保証人以外はたとえ血縁関係者であろうと支払い義務はないのです。 ただし、直接的な影響はないものの自己破産の場合は財産差し押さえの可能性も考えられるので、同居している家族が居る場合は相談の必要があります。

必ず連帯保証人には債務整理をすることを伝える

債務整理を行う場合にはどの手段を用いようとも、多かれ少なかれ連帯保証人へ影響が及ぶ事になります。 借金を整理して生活を立て直すためとは言え、債務者が独断で債務整理を行う事は連帯保証人にとって迷惑以外の何ものでもなく、なによりも「裏切られた」という気持ちになります。借り入れを行う際に連帯保証人になってくれた人との信頼関係の為にも、債務整理を行うのであればなるべく早く、連帯保証人へ相談することが重要になります。

債務整理時の連帯保証人への影響を抑えるための方法

借金額が少額の場合は協力してもらい完済する

連帯保証人付きの借金が返せなくなった場合には、債務整理を行うという手段があります。 しかし、手続きをすると、債権者から連帯保証人に対して返済を要求してくることがあります。 だからといっていつまでも債務整理をしないと、借金の額は膨らんでさらに迷惑をかけてしまうことになりかねません。 そのため、返済額が少ない場合は親族や友人に協力を仰いで完済できないか考えてみるのも1つの手段となります。

連帯保証人も一緒に債務整理をする

連帯保証人のいる債務をどうしても任意整理しなければいけない場合、連名で任意整理をすることで借金の肩代わりをしなくて済みます。 任意整理は債務整理の一種で、裁判所を介さず専門家に依頼して行う方法なので周囲にバレることもありません。 ただし、任意整理をすることには変わりありませんので、連帯保証人の事故情報も個人信用情報機関に登録され、ブラックリストに載ってしまう状態になるので注意しなくてはいけません。 必ず保証人と話し合い、理解をしてもらってから手続きをするようにしましょう。

まとめ

基本的に債務整理は本人以外行えませんが、任意整理の場合は委任状があれば家族でも対応可能です。 しかし、煩雑な手続きや交渉もあるので基本的には専門家に依頼することが一般的です。 債務整理を行うと、債権者は保証人に対して請求をすることになります。 通常の保証人であれば催告の抗弁権や分別の利益を主張することができますが、連帯保証人の場合はこの権利が認められていないため、突然全額の返済を求められることがあります。 このため、債務者は債務整理をする前に債権者と返済について話し合い、その結果保証人に請求がいくことになる場合は早めにそれを知らせる必要があります。 保証人に迷惑をかけないためにも、事前の相談は欠かさないようにしてください。

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